10年10月 IPOセミナー 【第11回】 3.(1)反社会的勢力対応
第11回です(全12回、昨年10月に行った研修会の内容の抜粋です)。
3.IPO審査における最近のトピック
(1)反社会的勢力対応
「反社」対応について、
証券会社・取引所ともに極めて慎重
【 背 景 】
・過去に新興市場に上場した会社の中には、上場前から反社会的勢力の関与が認められる会社が存在した。
(反社会的勢力の資金獲得手段としてIPOが使われた)
・既上場企業の中にも、反社会的勢力の関与が発覚する事例・疑われる事例が多発している。
また、反社会的勢力にはあたらないが、「反市場勢力」、「共生者」といわれる人物・問題企業も存在している。
↓ ↓ ↓
「反社」に関する審査の厳格化
【 主な審査ポイント 】
・証券取引所、証券会社による役員、株主、主要取引先の反社チェックの実施
(昨今、調査範囲が拡大している(株主に投資ファンドがいる場合等)) ← 文末に補足あり
・上場予定会社による役員、株主、主要取引先の反社チェックの実施
(インターネット検索、新聞記事検索等により広範囲のチェックが求められる)
・その他「反社」の排除に向けた社内体制の整備
(例:「反社対応マニュアル(規程)」の策定、警察当局との連携、社内講習会の実施、
各種契約書への暴排条項の追加)
従前は、証券会社・証券取引所が株主・取引先などに「反社」がいないことを確かめることが、IPO審査における「反社」対応のメインでしたが、今は、それに加えて、IPO準備会社側における「反社」の排除に向けた社内体制の整備も重視されています。
審査質問での個別的な確認も行われますが、IIの部などの「申請書類」においてもそれを説明することが求められています(以下ご参照)。

【 補 足 】(研修会後の規則改正分)
東京証券取引所は、11年3月31日付で、上場申請時に提出する「反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」の別添資料の「記載上の注意」を改定しており、この資料に記載が必要となる株主の範囲等について、見直しが行われております。
反社会的勢力との関係がないことを示す確認書(東証HP、Word様式)
例えば、「投資ファンド」が株主の場合に従来であれば、原則として当該投資ファンドの全ての出資者についての記載を求めていたのを、新規上場申請者の発行済株式の5%以上に相当する出資持分を持つ出資者(=「大口出資者」)についてのみ記載すればよいこととなりました。
極めて低い出資比率にしかならないような場合でも、投資ファンドに対して、その出資者の開示を求めてきたことに対し、(ファンド業界から)「厳しすぎる」との声が上がったことが改正の経緯とされています。
ただ、気をつけなければいけないのは、
この11年3月の東証における「確認書の記載範囲の見直し」をもって、IPO審査における「反社」チェックに関する問題点・企業側の大きな負担という点が解決したわけではありません。
(1) 東証において「しっかり確認する範囲を明確化」したものの、主幹事証券において「しっかり確認する範囲」は、必ずしもこれとは連動していない
(2) 多くのIPO準備会社が実務において負担に感じているのは、「取引所への提出資料の範囲」ではなく、会社側の手続として求められている「取引先等についての、かなり広範な範囲の反社チェックや、取引基本契約など契約書に「暴排条項」を入れること」
特に(2)については、多くの場合、絶対的な数値基準(社数や金額のカバー率など)が示されないという厄介さがあり、取引先(販売先・仕入先・外注先)が多い会社さんにとっては、結構な実務負担となっています(なかには、審査部門が求めている以上のことを公開引受担当の判断で指導しているケースなどもあるようです)。
資本市場の健全性を保つために、IPO時から「反社」対応をしっかりさせておきたいという取引所・証券会社のお考えについては、私としても異議はまったくありませんが、さすがに本件については、何とかならないか(まだ見直しの余地があるのではないか)と思っております。
(投資ファンドが東証等の市場関係者にチェックの範囲等について異議を唱えることはできても、IPO準備会社がそれ(異議を唱えること)をすることは現実的に出来ませんので・・・)
【参考過去記事】
反社会的勢力対策は超重要です (2008年06月22日)
暴力団排除条項(暴排条項)をお忘れなく (2008年09月01日)
【IPOセミナー(全12回)】
1.昨今のIPOの動向について
(1)IPO社数の推移と各種の事件 (11年1月5日更新)
(2)(主幹事)証券会社の動向 (11年1月7日更新)
(3)監査法人の動向 (11年1月18日更新)
(4)IPOに関連する法・制度改正(11年1月23日更新)
2.上場準備の進め方、留意事項
(1)標準的なIPO準備スケジュール(11年1月26日更新)
(2)IPO準備の現場の実情(11年1月27日更新)
(3)IPO準備の特徴・難しさ(11年3月24日更新)
(4)IPO準備で関わる各種関係者(11年3月27日更新)
(5)上手にIPO準備を進めるには (11年4月11日更新)
(6)IPO準備プロジェクトチームについて (11年7月31日更新)
3.IPO審査における最近のトピック
(1)反社会的勢力対応(11年8月2日更新)
(2)労務コンプライアンス問題(11年8月7日更新)
3.IPO審査における最近のトピック
(1)反社会的勢力対応
「反社」対応について、
証券会社・取引所ともに極めて慎重
【 背 景 】
・過去に新興市場に上場した会社の中には、上場前から反社会的勢力の関与が認められる会社が存在した。
(反社会的勢力の資金獲得手段としてIPOが使われた)
・既上場企業の中にも、反社会的勢力の関与が発覚する事例・疑われる事例が多発している。
また、反社会的勢力にはあたらないが、「反市場勢力」、「共生者」といわれる人物・問題企業も存在している。
↓ ↓ ↓
「反社」に関する審査の厳格化
【 主な審査ポイント 】
・証券取引所、証券会社による役員、株主、主要取引先の反社チェックの実施
(昨今、調査範囲が拡大している(株主に投資ファンドがいる場合等)) ← 文末に補足あり
・上場予定会社による役員、株主、主要取引先の反社チェックの実施
(インターネット検索、新聞記事検索等により広範囲のチェックが求められる)
・その他「反社」の排除に向けた社内体制の整備
(例:「反社対応マニュアル(規程)」の策定、警察当局との連携、社内講習会の実施、
各種契約書への暴排条項の追加)
従前は、証券会社・証券取引所が株主・取引先などに「反社」がいないことを確かめることが、IPO審査における「反社」対応のメインでしたが、今は、それに加えて、IPO準備会社側における「反社」の排除に向けた社内体制の整備も重視されています。
審査質問での個別的な確認も行われますが、IIの部などの「申請書類」においてもそれを説明することが求められています(以下ご参照)。

【 補 足 】(研修会後の規則改正分)
東京証券取引所は、11年3月31日付で、上場申請時に提出する「反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」の別添資料の「記載上の注意」を改定しており、この資料に記載が必要となる株主の範囲等について、見直しが行われております。
反社会的勢力との関係がないことを示す確認書(東証HP、Word様式)
例えば、「投資ファンド」が株主の場合に従来であれば、原則として当該投資ファンドの全ての出資者についての記載を求めていたのを、新規上場申請者の発行済株式の5%以上に相当する出資持分を持つ出資者(=「大口出資者」)についてのみ記載すればよいこととなりました。
極めて低い出資比率にしかならないような場合でも、投資ファンドに対して、その出資者の開示を求めてきたことに対し、(ファンド業界から)「厳しすぎる」との声が上がったことが改正の経緯とされています。
ただ、気をつけなければいけないのは、
この11年3月の東証における「確認書の記載範囲の見直し」をもって、IPO審査における「反社」チェックに関する問題点・企業側の大きな負担という点が解決したわけではありません。
(1) 東証において「しっかり確認する範囲を明確化」したものの、主幹事証券において「しっかり確認する範囲」は、必ずしもこれとは連動していない
(2) 多くのIPO準備会社が実務において負担に感じているのは、「取引所への提出資料の範囲」ではなく、会社側の手続として求められている「取引先等についての、かなり広範な範囲の反社チェックや、取引基本契約など契約書に「暴排条項」を入れること」
特に(2)については、多くの場合、絶対的な数値基準(社数や金額のカバー率など)が示されないという厄介さがあり、取引先(販売先・仕入先・外注先)が多い会社さんにとっては、結構な実務負担となっています(なかには、審査部門が求めている以上のことを公開引受担当の判断で指導しているケースなどもあるようです)。
資本市場の健全性を保つために、IPO時から「反社」対応をしっかりさせておきたいという取引所・証券会社のお考えについては、私としても異議はまったくありませんが、さすがに本件については、何とかならないか(まだ見直しの余地があるのではないか)と思っております。
(投資ファンドが東証等の市場関係者にチェックの範囲等について異議を唱えることはできても、IPO準備会社がそれ(異議を唱えること)をすることは現実的に出来ませんので・・・)
【参考過去記事】
反社会的勢力対策は超重要です (2008年06月22日)
暴力団排除条項(暴排条項)をお忘れなく (2008年09月01日)
【IPOセミナー(全12回)】
1.昨今のIPOの動向について
(1)IPO社数の推移と各種の事件 (11年1月5日更新)
(2)(主幹事)証券会社の動向 (11年1月7日更新)
(3)監査法人の動向 (11年1月18日更新)
(4)IPOに関連する法・制度改正(11年1月23日更新)
2.上場準備の進め方、留意事項
(1)標準的なIPO準備スケジュール(11年1月26日更新)
(2)IPO準備の現場の実情(11年1月27日更新)
(3)IPO準備の特徴・難しさ(11年3月24日更新)
(4)IPO準備で関わる各種関係者(11年3月27日更新)
(5)上手にIPO準備を進めるには (11年4月11日更新)
(6)IPO準備プロジェクトチームについて (11年7月31日更新)
3.IPO審査における最近のトピック
(1)反社会的勢力対応(11年8月2日更新)
(2)労務コンプライアンス問題(11年8月7日更新)
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