新興市場の断末魔(週間ダイヤモンド)
今週号の週間ダイヤモンドは、IPOに携わられている方には必読かと思います。
タイトルと大項目は、以下のとおりで、
『新興市場の断末魔』 株式時価総額10兆円 「絶望市場」再生の処方箋
Part1 汚れちまったニューディール
Part2 時価総額7300万円!
Part3 紙クズと化したベンチャー株
Part4 許されざる「監査法人」
Part5 新興市場型「粉飾決算」
Part6 間違いだらけの市場ルール
と、なかなか刺激的です。
かなり分量がある特集記事ですので、詳細は本誌をお読み頂きたいところですので、印象的だったところだけをいくつかご紹介します(以下の引用箇所のうち、下線は私が付けました)。
●問題企業の監査依頼も殺到 2社に1社は「お断り」!(P56)
問題企業の駆け込み寺的な存在と言われることもある「監査法人ウィングパートナーズ」の赤坂代表社員のインタビュー記事です。
同法人が監査契約を結ぶ基準は、以下の2点とのこと (淡々と書かれていますが、かなりドキドキする内容です)
①会計処理に問題がないこと
(業績が厳しくてもゴーイングコンサーン注記をつければいいだけの話だ)
②反社会的勢力との関係がないこと
(当社との契約後に上場廃止となったケースはあるが、反社会的勢力とかかわったケースはない)
インタビューの結びとして、「当社が上場廃止の瀬戸際にある問題企業の「駆け込み寺」のように言われるのは、まったくもって心外だ」として終わっています。
そもそも、赤坂氏がこの特集テーマのインタビューに応じたということ自体がオドロキでした。
●監査法人に問われる「引き受けない勇気」(P58)
会計士協会の増田会長のインタビュー記事です。
「本来は監査を引き受けちゃいけないような上場企業の面倒を見る会計士がいるから、監査難民も出てこないと思うんです。」
「監査法人だって厳しいんですよ。一例を挙げれば、繰延税金資産。・・・・・(中略)・・・・100年に1度の激動期に来期のことなんてわからない。当の上場企業にだってわからないのに、監査法人が保証できるわけがないんです、本来は」
「新興市場の問題について、よく監査法人の責任を問われるのですが、非常につらい。監査人の99%はまじめにやっているんですよ」
●甘すぎる上場審査を黙認した取引所と証券会社の共犯関係 (P59)
「地方の新興市場「アンビシャス」、「セントレックス」、「Qボード」に上場している51社のうち、「継続企業の前提」に疑義がつく企業は11社ある。」
「その11社の上場時の主幹事証券会社は、旧ライブドア証券の1社を除くと、ディー・ブレイン証券、エイチ・エス証券、インヴァスト証券(旧KOBE証券)の3社のみ。」
「これが偶然といえるのか。」
●新興市場再生「5つの提言」(P73)
①市場退出ルールを強化せよ
②新規上場基準を緩和せよ
③取引所の責任を明確化せよ
④新興市場は6つも要らない
⑤海外ベンチャー誘致を急げ
昨今の新興市場についてを、かなり詳細に、かつ強い問題意識をもって取材されており、全般的にはとてもよく出来た特集記事だと思います。
が、じーっくり読むと、
・「日本の新興市場だと上場申請から承認まで2年かかるが・・・」 ←(コメント)そんな市場はありません
とか、
・日本市場は上場関連コストが海外市場よりも高い(マザーズは370万円、英国AIMは300万円などの説明) ←(コメント)証券取引所に支払うコストだけでの単純比較はどうなんでしょう。英国AIMに上場する場合、NOMADと呼ばれる業者に支払うコストが別途相応にかかりますので、こういう比較をするのであればトータルでの比較をしないといけないのでは?
のようなツッコミどころもところどころありますが、ご愛嬌ってところでしょうか。
いずれにしても、なかなか読みごたえのある記事でした。
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