東証 「四半期決算に係る適時開示の見直し」など
四半期決算に係る適時開示の見直し、IFRS任意適用を踏まえた上場制度の整備等について
が公表されてます。
http://www.tse.or.jp/about/press/100427s.pdf の 36枚目~
(同一PDFにその他の資料も混在しています)
先日公表された、
上場制度整備懇談会ディスクロージャー部会報告「四半期決算に係る適時開示、国際会計基準(IFRS)の任意適用を踏まえた上場諸制度のあり方について」(平成22年3月24日公表)
の提言を踏まえた制度変更です。
>「四半期決算情報について従前示していた早期開示目標(30日以内)は取りやめることとします。
などが盛り込まれています。
実施時期は、以下の予定とのことです。
・平成22年6月末を目途に実施します。
・四半期決算に係る改正は平成22年6月30日以後最初に終了する四半期決算に係る適時開示から、通期決算に係る改正は平成23年3月1日以後最初に終了する通期決算に係る適時開示から適用するものとします。
【参考過去記事】
東証 「四半期は30日以内で」を撤廃、開示内容も簡素化へ(10/03/25)
「東証上場の手引き」、「マザーズ上場の手引き」の最新版(2010年版)発売
●東証HP:新規上場の手引き(東証1部、2部)
●東証HP:マザーズ上場の手引き
東証(本則もしくはマザーズ)への準備を進められている会社さんについては、常に最新版を持たれたほうがよいと思いますのでお買い求めになることをオススメいたします。
(証券会社さんなどから頂けることもありますが)
参考記事: IPO参考書籍
これで解けるか? 「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」(金融庁) の続き
先日、
これで解けるか? 「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」(金融庁)
の記事で、金融庁から公表された「11の誤解」を紹介しましたが、それの続きです。
昨日ですが、公認会計士主催のセミナー(会計士向け)で、この「11の誤解」の解説を聞く機会がありました。
この公表物の作成に携わった方(金融庁)が直接説明をして下さいました。
「一部の経済週刊誌等において、IFRSについて誤解しかねない説明が度々なされており、それを払拭する必要がある」との認識とのこと。
特に印象に残った部分をご紹介します。
(このような内容で説明がなされたという記憶での記述ですので、用語・言い回し等は不正確かもしれませんがご容赦ください)
3.全面的なITシステムの見直しが必要か
→ 「IFRSの全面適用が決まると、ITシステムの大幅見直しの需要が膨れ上がることが見込まれるため、今からITエンジニア(コンサルタント)と契約しておくべき」というようなことまで聞こえてくるがこの説明は明らかに行き過ぎ。
6.英語版IFRSを参照する必要があるのか
→ 「翻訳版ではニュアンスなど含めて十分とはいえず、翻訳版を読むだけでは足りない。原典にあたらないとダメ」ということを言う方がいるようだが、それはいかがなものか。もし翻訳版での要求には対応したものの原典にあてはめと十分ではないというようなケースがあったとしても、翻訳版に対して正しく対応をしていたという状況に対して、それが問題だとして罰則や処分を課すというようなことはまずあり得ない(法的にできるわけがない)。
やはり、J-SOXの時と似ている気がします(当時も「11の誤解」が出ました)。
とはいうものの、過敏な反応や「誤解」を取り除くというのが趣旨であり、IFRSの適用は、「会計基準」が変わるという大事です。冷静に受け止めたとしても、かなり大きな影響・負担が出てくるケースも当然にあるのでしょうから、本資料(11の誤解)が公表されたことをもって、過度に安心(IFRSへの取組意欲低減)をされてしまうことがないよう気をつける必要もあるのだろうと思いました。
【参考過去記事】
金融庁から「内部統制報告制度に関する11の誤解」等が公表されています(08/03/11)
テーマ : 会計・税務 / 税理士 - ジャンル : ビジネス
これで解けるか? 「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」(金融庁)
「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」 が公表されてます。
http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20100423-2.html
公表の背景としては、
> IFRSに関しては、一部に「誤解」を招く情報が流布されているのではないかとの指摘があるところです。こうしたことから、「誤解」と思われる事例を集めた「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」を公表し、IFRSに対する理解が得られるよう説明することといたしました。
とのことです。
Q&Aの内容は以下のとおりです。
詳細は、本資料の原文をぜひお読みください(簡潔に書かれている資料ですのですぐに読み終わります)。
(全般的事項)
1. 上場企業は直ちにIFRSが適用される
2. 非上場の会社(中小企業など)にもIFRSは適用されるのか
3. 全面的なITシステムの見直しが必要か
4. 社内の人材のみではIFRSに対応できないのではないか
5. 監査人の対応が厳しくなるのではないか
6. 監査は国際監査基準で行う必要があるのか
7. 英語版IFRSを参照する必要があるのか
8. 財務諸表は英語でも作成する必要があるのか
9. 監査は大手監査法人でないとできない
10. これまでとは全く異なる内部統制を新たに整備しなければならないのか
11. 業績管理や内部管理の資料もIFRSになるのか
(個別的事項)
1.IFRSは徹底した時価主義なのではないか
2.持ち合い株式の時価評価により業績(当期純利益)が悪化するのではないか
3.IFRSでは、利益の表示が当期純利益から包括利益のみに変わるのではないか
4.企業年金の会計処理方法の変更により、企業の業績が悪化し、年金財政も悪化・崩壊するのではないか
5.売上の計上にあたり、IFRSを導入すると出荷基準が使えなくなり、期末はすべての着荷や検収の確認をしなければならないのか。また工事進行基準は認められなくなるのか。
6.減価償却の償却方法は定率法が全く使えなくなるのではないか
J-SOX(の特需)が一服したタイミングでもあり、一部のIT関連企業やコンサルティング会社が「IFRS特需」を狙って、誤解を招くような説明をしているケースもあるようです。
J-SOXの導入期にも、「誤解」に踊らされてしまった会社さんも少なくなかったようですので、「IFRSに関する誤解」にもご注意ください(企業はJ-SOXでかなり勉強(苦い思い出)をされたこともあり、IFRSについては慎重に状況を見極める動きが多いようです)。
テーマ : 会計・税務 / 税理士 - ジャンル : ビジネス
「不公正なファイナンス」に一般投資家もご注意を(日経 夕刊)
先週の日経新聞 夕刊に「目からウロコの投資塾」のコーナーで、4回シリーズで「不公正なファイナンスとは」の特集記事が出ていました(いわゆる「箱企業」についての解説などが出ていました)。
記事を書かれていたのは、証券取引等監視委員会の佐々木総務課長で、同氏は、不公正なファイナンスの排除(撲滅?)に向けてとても積極的な活動をされています。
啓蒙活動にも精力的に取り組まれており、その様子は、以下のウェブサイトで紹介されてます。
市場参加者・投資者への講演会等の開催状況について (証券取引等監視委員会HP)
3月に行われた会計士向けの講演においては、この手のファイナンスに関与する(=当局がマークしている)人物に、会計士も含まれているとのこと(特定の人物が良く出てくるとのこと)で、「この講演を聞いている方の中にいらっしゃらないことを祈ります」というようなジョーク(?)を言われていたそうです(リンク先資料 P.19)。
上場審査においては、IPO準備会社に対してかなり厳格な「反社会的勢力」、「反市場勢力」の排除が求められておりますが、これらの勢力の活動領域は、IPOよりも既上場企業にシフトしてきているようにも思えます。
【参考過去記事】
「不適切なファイナンス」がついに公の媒体に(09/04/28)
「不適切なファイナンス」が大流行?(09/03/29)
一建設 上場体験談(ジャスダックHP)
2009年12月25日にジャスダックに上場した一建設株式会社(代表取締役社長 小泉 公善氏)の上場体験談がジャスダックのHPに掲載されています。
JASDAQ上場を達成した会社の体験談 一建設株式会社 代表取締役社長 小泉 公善 殿
http://www.jasdaq.co.jp/list/taiken/taiken3268.jsp
詳細は、原文を直接お読み頂ければと思いますが、「ロードショウ」の部分のみ引用してご紹介します(下線は私が付しました)。
IPO時で一番印象に残っておりますのが、ロードショウです。2009年11月24日から12月3日までの実質8営業日で43社(一日平均5~6社)の機関投資家を訪問しましたが、これだけの短期間の間に数多くの方々とお会いし、話をした経験は初めてであり、肉体的にも精神的にもかなり大変でした。しかしながら、このことにより当社と他社との違いや、強みや弱みなどを改めて再確認・再考する機会ともなったため、今後の当社の事業展開を検討する上でとても良い経験になったと思っております。 |
上場承認後に行われるロードショーでは、機関投資家が会社の評価について歯に衣着せぬ(遠慮なく)コメントをしてきます。
厳しい指摘・意見が出ることも多いようですが、それが良い刺激・気づきになることも多いと聞きます。
上場準備中の会社の方には、 他社分も含めて体験談を一読されることをオススメいたします。
(ジャスダック以外の市場が想定市場の会社さんでも)
ジャスダック証券取引所は、精力的に上場体験談を公開・更新されておりとても良い取組みだと思います。
ジャスダック証券取引所 「上場を達成した会社の体験談」
http://www.jasdaq.co.jp/list/list_40.jsp
【参考記事(カテゴリー)】
主幹事証券の選定に関するアドバイス
主幹事証券会社を選定する際のアドバイス(ヒント)程度ですが、まとめてみたいと思います。
最近は、複数の証券会社さんの中から主幹事証券会社さんを選定することが行われています(ビューティーコンテストなどと呼ばれます)。
その際の企業側の比較・判断材料としては、以下のような項目があります。
項 目 | 説 明 | 備 考 |
上場市場に関する提案内容 | マザーズ、ジャスダック、東証本則などどの市場に上場するか | なぜその市場を推奨するのかの理由まで聞いたほうがよいと思います。 |
上場時期に関する提案内容 | 基準決算期(直前期)をいつに設定するか | 早い時期を提案してくれるところが良いように思えますが、全てが上手くいった場合のみ実現する「超ベストシナリオ(かなりの無理をしなければいけない)」の場合などもあります。 |
資本政策に関する提案内容 | オーナーの創業者利潤確保やファンド持ち分のEXIT計画など(関係会社の整理など含む) | 株主構成が複雑なケースなどは、この部分での提案内容に優劣が出るケースもあろうかと思います。 場合によっては、IPO時の想定の企業価値(時価総額など)が提示されることもあります。 |
IPOに向けての問題点・検討事項に関する提案内容 | IPOに向けての課題の整理、スケジュール案について | 自社の実情(問題点)をどこまで把握した上での提案なのかは重要です。 |
証券会社のIPO業務に関する実績 | 過去のIPO社数や自社の属する業界に関するIPO実績など | 実績があるほうが当然に安心感があります。が、実績が少ないからこそ熱心に対応してくれるということもあるようです(ただし、いくら熱意があってもノウハウがなければダメですが・・・)。 |
証券会社の社内体制、担当者に関する事項 | (会社として及び担当者個人の)自社の業界に関する理解や熱意、書類作成等の実務面でのサポート体制 | 組織としての姿勢も重要ですが、2~3年程度の期間はかなり濃いお付き合いになりますので「担当者」とウマが合いそうかどうかは重要な要素かと思います。 営業部門だけでなく公開引受部門の支援体制も示されるケースが多いようです。 |
上場までのコスト(コンサルティング費用・IPO時の引受手数料率) | コンサルティング費用、引受手数料ともに各社内でも一律(どの会社でも固定金額)ではなく、ケースバイケースでの設定がなされることが多いようです。 | この部分の大小だけで判断することは避けるべきでしょう(いくら安くても実現に至らなければ何の意味もありません)。 |
もし、複数社の中から選ぶ場合には、上記のような要素を総合的に検討して決定することとなると思います。
決定権を持つのは、通常は社長や取締役会ですが、株主(VCなど)やメインバンクの意向が影響することもあります。
上記のような視点とは別に、ぜひ気をつけていただきたいのは、「中途半端な噂」の類です。
・A証券はXXXだからダメ
・B証券はXXXだからおすすめ
のような話題が聞こえてくることがありますが、ほとんどの場合、その証券会社全体についてを的確に評価しているようなものではなく、過去のたった一つの事例での話に尾ひれがついたものばかりのように思えます。
また、程度の違いはあるかもしれませんが、どの証券会社さんも、担当者の個人差というものが存在します。
・C証券は、XXXに厳しい
・D証券は、XXXは判断が甘い
のような噂話についても、その時の担当者の個別事例である可能性が高いと思ったほうがよいと思います。
面白いとか覚えやすい事例があったりすると、それが伝搬して大方の評価のようになってしまっていることもあるようですが、この手の話に振り回されるのはよろしくないと思います。
ということで、主幹事証券会社選びは、「会社名」での選定も重要ですが、「誰に(どの部署の誰に)依頼するか」もとても重要です。
最後に、ひとつだけ「中途半端な噂」の事例紹介です。
以前、関与先企業の経理部長を探していた際に、応募書類に、
「証券会社やVCなどの事情に精通しており、幅広い人脈があります」
との記載がある方がいました。
面接の際にその部分を聞いてみましたが、
「Eファンドが大株主の会社は、F証券を主幹事にすると両社は系列なので審査が思いっきり甘くなるんですよ(知らないんですか!?)」
と真顔で言っていました(ここで社名が出た会社さんのご事情を僅かながら存じ上げているつもりでしたが、明らかに不適当な説明でした。あと、幅広い人脈というのも大したものではありませんでした・・・・)。
この手の業界ネタのような話題については、わかっている人からすれば真贋が明白なものであっても、業界外の人にとっては物凄い新鮮に(素晴らしいものに)映るようです。
上の事例での面接に同席した企業の方は、面接後に「あの人はIPO業界もよく分かっており、結構出来る人のようですね」のような好印象を抱いていました(もちろんその場で私がNG評価をつけましたが)。
主幹事証券会社は、IPOに向けての最も重要な関係者です。
相互の信頼関係が大切ですので、後悔がないよう選定されればと思います。
【参考過去記事】
・各種関係者(証券会社)(08/04/27)
・2009 IPOデータ(総括① - 各種分類別集計表) (10/01/03)
注目NHKドラマ「チェイス」
国税査察官(マルサ) VS 脱税コンサルタント という内容のNHKドラマが今週末からスタートします。
http://www.nhk.or.jp/dodra/chase/
番組HPを見ても、とても面白そうで楽しみです。
(「ハゲタカ」や「ドラマ監査法人」もよく出来ていましたので)
【参考過去記事】
いよいよ今週土曜日「ドラマ 監査法人」 (08/06/12)
ドラマ『監査法人』がDVD化 (08/11/06)
テーマ : 会計・税務 / 税理士 - ジャンル : ビジネス
しばらく更新頻度が落ちてますが・・・
この最近、IPOに関する目立ったニュース・制度変更などがない(ネタ切れ?)というのもあるのですが、本業が猛烈に忙しくなってしまっています(このような言い訳は不本意ですが)。
ただ、ネタ切れ感があることも否めませんので、もしIPOに関する疑問点や取り上げてほしいテーマ等がございましたらコメントにでも投稿していただければ幸いです(なるべく取り上げますので)。