ちょっと変わったストックオプション(資本政策事例)
9月17日にマザーズ上場予定のキャンバス社について、少し変わったストックオプションが発行されていますので、事例として紹介しておきます。
今回ご紹介するのは、同社の「第6回新株予約権」です。
・ポイント①付与時期が遅い
(平成21年5月22日臨時株主総会決議での発行です。上場申請期の下期になってからの付与はケースとしては珍しいと思います)
・ポイント②権利行使価額&権利行使の条件に特徴あり
(以下、目論見書より引用)
【権利行使価額】 |
【新株予約権の行使の条件】 |
何故、同社がこのようなストックオプションの発行を行ったのかについては、個別事案ですので事細やかに分析コメントはいたしません(興味ある方は、ご自身でお願いします)。
ポイントは、「過去(増資・オプション)及び上場時の株価の推移」、「オプションの権利行使期間」でしょうか。
なお、本記事を読まれた上場準備会社さんに気をつけて頂きたいのは、
単純にこの事例を見て、他の会社でも同様の資本政策が実行できるというわけではない ということです。
本件は、極めて特殊なケースとして考えるべきであり、上場直前期や申請期の資本政策については、主幹事証券会社などと十分に協議の上で(主幹事証券の理解・了承を得た上で)実行をすべきところです(本件も当然にそれをやっているはず)。
他社事例を見て、勝手な判断で「増資」・「ストックオプション」・「株移動」などを行ってしまうと、取引所が定める「上場前規制」や金商法の規制などには何ら抵触していなかったとしても、『致命傷』として上場が出来なくなってしまう可能性も秘めています。
上場準備会社にとって、「資本政策」はそれほどデリケートなものですので、慎重にご対応ください。
・参考過去記事:「資本政策」はとても大切?(08/01/04)
東証がマザーズ改革案を公表、株価9割下落で退場!
東京証券取引所HPに、「社長記者会見」の資料として、
『マザーズの信頼性向上のための上場制度の整備について 』 が公表されています。
制度変更の内容は、以下のとおりです。
1.マザーズの上場審査に係る取扱いの整備 (1)推薦書の取扱いの見直し 最近1年間において、利益の額が前期比で3割以上増加して1億円以上あり、かつ売上高が前期比で増加している場合には、マザーズへの上場申請時に幹事取引参加者が提出する「推薦書」において、高い成長の可能性に関する事項の記載を要しないこととします。 (2)事業計画の合理性に係る上場審査項目の新設 マザーズの上場審査項目として「事業計画の合理性」を明示することとし、新規上場申請者の企業グループが相応に合理的な事業計画を策定しており、当該事業計画の遂行により、経営成績が良好となる見込みがあるかどうかを確認します。 (3)上場審査における要件の見直し マザーズの上場審査項目である「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」の審査については、新規上場申請者の会社規模や成熟度等に応じて行うこととします。 |
2.マザーズの上場廃止基準の項目の新設 マザーズの上場会社の株価が、上場後3年を経過するまでの間に公開価格の1割未満となった場合において、9か月(事業改善計画等の提出がない場合は、3か月)以内に、公開価格の1割以上に回復しないときは、その上場を廃止することとします。ただし、上場後の市況の変化その他の事情を勘案して当取引所がこの基準によることが適当でないと認めたときは、この限りではありません。 |
3.マザーズ上場会社の上場後における情報提供の一層の充実 マザーズの上場会社は、年2回以上、当該会社に対する投資に関する説明会を開催するものとします。 |
もう暫くすると、大証-ジャスダックの統合の行方も明らかになるとされておりますので、その辺りも意識した上での活性化策なのだろうと思います。
なお、本件について、こちらの著名なブログでも話題にされておりました。(本記事だけでなく、こちらのブログはとても勉強になりますのでオススメです)
新上場廃止基準(株価基準)をマザーズに導入 (ビジネス法務の部屋、山口利昭先生)
山口先生も、「IPO準備企業におけるJ-SOX」について問題意識をお持ちのようです。
米国は IPO 復調?
といっても日本ではなく米国のことですが・・・・
米国の新規上場、来年増加の見通し=NYSE幹部 (ロイター社 「プレジデントロイター」)
以下引用です(下線は私がつけました)。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)の親会社NYSEユーロネクストの幹部は17日、米国で来年、新規上場が増える心強い兆候がみられるとの認識を示した。 今年これまでに新規上場したのは15社だが、新規上場は年内に20社以上に増える見通しで、来年も上場の増加が続く見通しという。 当地で会見した上場担当のスコット・カトラー氏は「今年末から来年にかけて、新たな資本調達のサイクルが始まるとみている」と指摘。「上場申請が増えていることは心強い」と述べた。 |
さて日本はどうなのでしょうか。。。
ジャスダックとヘラクレスの統合の行方がもう暫くしたら明らかになってくるようです。
来年にむけて米国同様「心強い兆候」が見られればいいのですが・・・・・
シイエム・シイ上場体験談(ジャスダックHP)
(メールマガジン「JASDAQ IPO WAVE」としても配信されています)
JASDAQ上場を達成した会社の体験談 株式会シイエム・シイ 経営企画室長 森脇 邦彦 殿
http://www.jasdaq.co.jp/list/taiken/taiken2185.jsp
以下、一部のみ引用です(注:下線は私が付しました)。
(1) | 予実差異分析が最も大きな課題であり、これを全社に徹底するのにかなりの時間と労力を要しました。どういった理由で予算を策定し、実績と乖離した理由は何だったのか。この点については、上場準備を始めるまできちんと取り組んだ実績が無く、その必要性と各部門の意識向上に大きな労力を費やしました。予実差異分析は主幹事証券会社からも厳しく指導を受けた課題の一つであり、上場後も必要となる事項でもあります。 | |
(2) | 「上場申請のための報告書」や「上場申請のための有価証券報告書」のボリュームが大きく、初稿作成後も修正の繰り返しでした。ただし、これらの申請書類を1頁ずつ作成することによって、会社全体を深く理解することができたことは大きな財産になったと思っています。 | |
(3) | 証券会社からの質問量が膨大であり、期限内に的確な回答を作成するのに大変なエネルギーを要しました。質問は、質問書という形式に限らず株式上場承認日まで継続され、過去に回答した内容との整合性等についても細かく審査されました。 第三者が読んでも理解してもらえる回答を作成しなければならず、何度も何度も質問を受け続けていくうちに、回答書の作成能力、ひいては第三者への説明能力が少しずつアップしていくのを実感しました。 |
予算統制、申請書類(Ⅰの部、Ⅱの部)、審査対応などが大変だったとのことです。
が、大変ななか、それによって得たものが大きい旨実感されているということも言われています。
上場準備中の会社の方には、 他社分も含めて体験談を一読されることをオススメいたします。
(ジャスダック以外の市場が想定市場の会社さんでも)
ジャスダック証券取引所は、精力的に上場体験談を公開・更新されておりとても良い取組みだと思います。
(その他の取引所はこのような取組みはほぼ皆無でしょうか。ヘラクレスが頻度は少ないですがメールマガジンで体験談を配信している程度かと思います。)
ジャスダック証券取引所 「上場を達成した会社の体験談」
http://www.jasdaq.co.jp/list/list_40.jsp
キャンバス
会社名: キャンバス
URL : http://www.canbas.co.jp/
・事業内容: 抗癌剤の研究・開発
・基準期: 2008/06
・市 場: マザーズ
・主幹事証券: 三菱UFJ
・監査法人: 有限責任監査法人トーマツ
・証券代行: 中央三井
・印刷会社: プロネクサス
・想定発行価格 2,000
・上場時株数 2,806,200
・想定発行価格ベース時価総額(百万円): 5,612
事業等のリスクは、下の「続きを読む」で
キャッシュ・フロー計算書のつくり方
未上場会社の多くはB/S、P/Lのみを作成し、C/Fは作成していない会社も多いと思います。
(「資金繰り表」を作成している会社さんは多いですが、「資金繰り表」とC/Fは別物です。「資金繰り表」は任意に作成するもので様式も自由ですが、C/Fは監査法人監査の対象物でもありルールに則った作成をしなければいけません)
ということで、これからC/Fを作成するという会社さん向けに入門書を紹介しておこうと思います。
入門者を対象にしています、かなり平易に書かれていますが、内容はそれなりに本格的です。
特殊なケースでなければ、本書の説明のままにEXCELシートを作成していけば、入門者の方でもそれなりのC/Fが作成できるようになります。
大手監査法人(新日本)の会計士の方が書かれているというのも安心感があります。
「そろそろC/Fを作成しなければいけないが、作り方が・・・・・・」という上場準備会社の経理部門の方にはオススメの一冊です。
テーマ : 会計・税務 / 税理士 - ジャンル : ビジネス
三菱総合研究所
会社名: 三菱総合研究所
URL : http://www.mri.co.jp/
・事業内容: シンクタンク・コンサルティング事業及びITソリューション事業
・基準期: 2008/09
・市 場: 東証(未定)
・主幹事証券: 三菱UFJ
・監査法人: 有限責任監査法人トーマツ
・証券代行: 三菱UFJ
・印刷会社: プロネクサス
・想定発行価格 2,000
・上場時株数 16,424,080
・想定発行価格ベース時価総額(百万円): 32,848
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シーボン
会社名: シーボン
URL : http://www.cbon.co.jp/
・事業内容: スキンケア製品(洗顔料・クレンジング等のベーシック製品及び美容液・クリーム等のスペシャル製品等)を中心とする化粧品及び医薬部外品の製造販売
・基準期: 2009/03
・市 場: JQ
・主幹事証券: 大和証券SMBC
・監査法人: 有限責任監査法人トーマツ
・証券代行: 住友
・印刷会社: プロネクサス
・想定発行価格 1,860
・上場時株数 4,243,000
・想定発行価格ベース時価総額(百万円): 7,892
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SHO-BI
会社名: SHO-BI
URL : http://www.sho-bi.jp/
・事業内容: 化粧雑貨、服飾雑貨及びキャラクター雑貨等の商品の小売業者、卸売業者等への販売
・基準期: 2008/09
・市 場: JQ
・主幹事証券: みずほインベスターズ
・監査法人: 新日本有限責任
・証券代行: みずほ
・印刷会社: 宝印刷
・想定発行価格 400
・上場時株数 13,160,000
・想定発行価格ベース時価総額(百万円): 5,264
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