捜査機関のブラックリスト?
『証券業界 魑魅魍魎マップ』というのが話題になっているそうです。
捜査機関のブラックリストか? 「芋づる式摘発か」謎呼ぶ相関図 (msn産経ニュース 08年8月19日)
以下、ニュースの冒頭部分のみ引用します。
> 企業や金融ブローカー、政治家ら約80社、約50人の関係が描かれた出所不明の相関図が金融・証券業界に出回り、さまざまな憶測を呼んでいる。「証券業界 魑魅魍魎(ちみもうりょう)マップ」と銘打たれた図は昨年から業界に出回ったが、記された企業や個人が金融商品取引法(旧証券取引法)違反などで次々と摘発。捜査機関が作製した“ブラックリスト”との有力説もあり、「図に沿って芋づる式に摘発されるのでは」と業界関係者が関心を寄せている。
詳細は、記事を直接お読み頂ければと思いますが、
当該マップには証券市場の要注意人物のネットワークが詳細に書かれているとのことです。
(以前、私も、これとは別物ですが同様の相関図を見たことがあり、あまりに複雑な人間関係と意外な人物の登場に驚いた記憶があります。)
上場準備においても、すばり反社会的勢力(暴力団など)だけでなく、反社会的勢力とはいえないまでも資本市場で歓迎されない会社・人物がいるようで(「反市場勢力」と称されたりするようです)、それらとの関わりも証券会社・証券取引所は厳しくチェックしているようです。
最近は、上場企業の倒産が頻発していることもあり、信用(与信面)について昔は言われていた「相手先が上場企業だから安心」という感覚は徐々に変わってきていると思いますが、
この会社と関わって大丈夫なのか(反社会的勢力・反市場勢力ではないか)という視点でも、「相手先が上場企業だから安心」とはいえなくなってきているということですので恐ろしい世の中だと思います。
今回の『魑魅魍魎マップ』も是非拝んでみたいものです。
ジャスダックの行方 (信頼と活力ある新興市場の機能向上に向けたアクションプランについて)
ジャスダックの株主が日本証券業協会から大阪証券取引所に売却される見通しとなっていることを受けて、「ジャスダック市場は将来どうなるんでしょうか」という声をよく聞きます。
上場準備会社で、希望市場がジャスダックの会社さんにとっては、その行方が気になるのは当然のことと思います。
これにも一部関連して、08年8月25日のジャスダック証券取引所の定例記者会見において、
信頼と活力ある新興市場の機能向上に向けたアクションプランについて
が公表されています。
その中では
2.ジャスダック証券取引所が取り組むべき課題 として
(1)信頼性の向上に向けた制度整備 ← 『アクションⅠ』
(2)活力あるベンチャー企業の支援に向けて ← 『アクションⅡ』
(3)更にアクションプランに盛り込むべき事項が生じた場合 ← 『アクションⅢ』
が挙げられています。
直ちに行われる『アクションⅠ』については、
> まず、企業行動に関する制度整備としては、株主・投資者保護及び公正かつ健全な市場の運営という観点から、企業行動規範を制定するなどの対応を図ります。
> また、上場規則の実効性確保に係る対応として、上場廃止基準に抵触しない程度に重大な上場規則違反が認められた上場会社の継続管理をより充実させる観点から、「特設注意市場銘柄」制度を新設するとともに、投資者へ上場銘柄の状況を分かりやすく周知する観点から、現行の「監理ポスト」等の呼称を見直すなどの対応を図ります。
ということで、すでに行われている東京証券取引所における制度変更に類似した内容となっています。
【監査役会設置を義務付け】
ジャスダックへの上場準備をされている会社さんにとって、ひとつ影響があると思われるのは、
> 1.(1)①(c)上場会社の機関
> 上場会社(上場外国会社を除く。)は、次に掲げる機関を置くものとします。
> ① 取締役会
> ② 監査役会又は委員会
> ③ 会計監査人
> 会社法上の大会社以外の上場会社(上場外国会社を除く。)においても、会社法において大会社に義務付けられている監査役会(又は委員会)及び会計監査人の設置を義務付ける趣旨です。
の項です。(※ 上場準備会社だけでなく、既上場の会社にも影響あります)
東証(マザーズ含む)においては、しばらく前の規則改正によって、大会社ではなくても監査役会又は委員会(と会計監査人)設置を義務付けることとされていましたが、ジャスダックについては規則上の求めはされておりませんでした。
が、この度の規則改正によって、ジャスダックでも監査役会設置が義務付けられることとなります(経過措置あり)。
従前は、上場しても大会社にならない(=資金調達が小規模だった)場合には、常勤監査役1名+非常勤監査役1名という監査役2名体制というのが多くあったと思います。
が、今後は、大会社ではなくても、どこかのタイミングで監査役3名体制(監査役会設置=監査役3名以上)とすることが求められるということです。
東証の規則改正がなされた時点で、将来的には当然、ジャスダック等の他市場も同じことが求められるだろうというのは推測されていたことですので、驚きもしませんでしたが、もし『わが社は上場しても大会社にもならないし、ずっと監査役2名体制だ』とお考えの上場準備会社さんがおられた場合には、本改正は要チェックです。
あと、本当に関心があるのは、これから対応が図られる『アクションⅡ』(と『アクションⅢ』)です。
NEO市場がどうなっていくのかなど、注目していきたいと思います。
(読書録)株式市場は現在進行形
過去記事 「幻想価格」>「現実価格」? において、JPモルガン・アセット・マネジメント 太田忠氏が書かれたウェブ記事を紹介しました。
その太田忠氏の著書があったので読んでみました。
内容としては、あのウェブ記事(『経済羅針盤』というコーナーを数名で連載しています)の、同氏の書いた記事の総集編になっています。
01年から07年までについて、新興市場株式や中小型株式の動向についてを、同氏の考察を加えながらわかりやすく書かれており、株式市場における証券取引所、証券会社や上場企業に対するアナリストの視点での要望が述べられています。
「こういう会社には投資してはいけない」の項では、以下8項目が示されています。
①ビジネスモデルそのものが崩壊
②甘い見通し、甘い予想
③事業の間違った多角化
④社名変更
⑤株主との利益相反を平気で行う企業
⑥瞬間的好環境に現れる”雨後の筍”企業
⑦IPOをゴールとする経営者
⑧地方証券取引所上場企業
本書は、過去記事 「幻想価格」>「現実価格」? を頷きながら読んだ方には、オススメです(同ウェブ記事に違和感を持たれる方にはオススメではありません)。
サニーサイドアップ
会社名: サニーサイドアップ
URL : http://www.ssu.co.jp/
・事業内容: 1)PR(広報)・SP(販促)におけるコンサルティングから戦略・施策の企画立案、実施 2)アスリート・スペシャリスト(アーティスト・文化人等)のマネジメント 3)各種コンテンツの企画・制作
・基準期: 07年6月期
・市 場: ヘラクレス
・主幹事証券: みずほインベスターズ
・監査法人: 新日本
・証券代行: みずほ信託
・印刷会社: プロネクサス
・想定発行価格ベース時価総額(百万円): 2,369
事業等のリスクは、「続きを読む」で
「幻想価格」>「現実価格」?
ひとつ興味深いウェブ記事を見つけましたので紹介します。
Nikkei.Net経済羅針盤 「幻想価格」>「現実価格」に支配されるIPO市場(08/5/26)
JPモルガン・アセット・マネジメントの太田忠氏が書いた記事です。
詳細は、記事を直接お読みいただくとして、ポイントと思った箇所のみ以下に示します。
●IPO企業の数は激減していると騒いでいるが・・・
> IPO市場をこれまで20年以上見てきたが、相場環境が良くても悪くても年間に投資に値する企業の数は私の個人的見解ではせいぜい10―20社程度に過ぎず、IPOの企業が増えれば増えるほど投資に値する企業が増えるという状況はついぞお目にかかったことはない。したがって、投資に値する企業数に変化がないとすれば、究極論を言えば、投資家にとってIPO企業の数が200社であろうが、50社であろうがあまり意味のないことである。
●「幻想価格」と「現実価格」はこうも違う
> 適正な成長をしているにもかかわらず、最初の株価が「幻想価格」となり、初値から時間が経過した後の現在の評価を「現実価格」と名付けるとすると、過度な「幻想価格」は「現実価格」にとって大敵となる。いくらすばらしい企業でも「幻想価格」があまりに高くついたために、利益成長が続いても「現実価格」のリターンがマイナスにとどまる、ということは珍しいことではない。
●地方証券取引所は廃止せよ
> 名古屋セントレックスの32社、札幌アンビシャスの12社、福岡Qボードの10社の合計54社における公募価格から初値のパフォーマンスである「幻想価格」の平均値は73.1%。初値がついた後の現値との比較である「現実価格」はマイナス65.9%となり、公募価格と比較した現値のパフォーマンスはマイナス41.0%となっている。単純に言えば、公募価格が1000円で決まったIPO企業の初値は瞬間的には1731円となるが、その後株価は急落し、現値が590円まで下がってしまい、公募価格1000円に対しても大幅に下落したことをあらわしている。
> 52社を個別企業でみると、「現実価格」がプラスの企業はわずか2社、公募価格と現値とのパフォーマンスがプラスの企業もわずか2社という悲惨なトラックレコードしか残せていない市場に期待するものは何もない。
> JPモルガン小型株チームではこれら3市場のIPO企業に対するロードショーへの参加を06年末からとりやめていることは第28回のコラム『新規IPOに望む条件』で述べたが、再開する意欲は全くない。
ちょっと過激な提言もあり、本記事の個々の内容についてのコメントは控えたいと思いますが、なるほどと思う点、同感・共感する点も多くありました。
IPO市場低迷中?
最近のIPO銘柄の状況です。
社 名 | 上場日 | 市場 | 仮条件 | 公募 | 初値 |
ベンチャー | 8 / 7 | ヘラクレス | 2,700円 | 3,000円 | 2,800円 |
トライ | 8 / 7 | マザーズ | 3,500円 | 4,000円 | 2,590円 |
アスコット | 8 / 5 | ジャスダック | 650円 | 650円 | 600円 |
3社連続で公募価格割れというとても厳しい状況にあります。
株式市況全体が低迷していますので、「仮条件」の設定時に、かなり抑えた(低い)株価を設定しているはずです。にもかかわらず、公募価格をこれだけ下回ってしまうというのは、投資家がIPO銘柄を敬遠してしまっているということだと思います。
活況時には、個人投資家の中には「IPO銘柄であれば何でも買い」という方が相当数おられたようですが、最近の初値動向では個人投資家は離れてしまい、また、機関投資家も規模も小さいIPO銘柄は投資対象としていないということなのだと思います。
ただ、言えることは、この厳しい時代に上場する会社の中には、株価が過小に評価された会社もあるはずで、しっかりとした企業選別ができれば投資対象として魅力ある会社もあるはずです(大化けする会社があると思います)。
IPO市況が過熱する必要はありませんが、正常化はしてほしいと思う今日この頃です。
株価市況については、自分の立場では何もすることは出来ないのですが、さすがに今の状況は厳しいなぁと強く感じた為、記事にしてみました。